「アジャイル式」健康カイゼンガイド
著者: 懸田剛 / 福島梓
出版: 翔泳社(2022年5月)
前身: 同人誌「アジャイルカラダ開発」(BOOTH / Amazon Kindle)
Amazon: https://amzn.to/3RMBjX5
身体性・全体性・構造保存変容という思想をソフトウェアエンジニアの日常的な健康実践に接続したTakeshiの集大成的著書。
核心的な問い
カラダというシステムをどういきいきとしたLiving Systemへと構造保存変容させていくか
「アジャイル式」と言ってるけど、自分的にはパタン・ランゲージやネイチャーオブオーダーの「構造保存変容」なんだよね。「いまここ」から始め、状況に逆らわないで少しづつ適応していく。自分の心地よさを大事にして動的平衡を生み出し続ける。「しなければならない」から「ありたい」へ向かう。(Scrapbox 2023/6/6)
思想的位置づけ
表面上は「アジャイル開発のエッセンスを健康に応用」だが、Scrapboxの記録を見ると実態はより深い:
「つまるところ、カラダ(身体+周辺環境+生活習慣)における全体性の回復、質(クオリティ)の生成なのです。」(アジャイルカラダ開発 概要欄)
「実はこの本、パタンで漸進的変容するためのガイドでもあります。」(Scrapbox 2022/6/2)
「アジャイル式健康カイゼンの話は、結局のところ調和を生み出す姿勢・プロセスの話であってこの立ち位置こそが最も重要です。具体的な手法には囚われません。」(Scrapbox 2022/6/8)
主要概念の接続マップ
The Nature of Order(アレグザンダー)
↓ 構造保存変容
カラダ = Living System
↓ いきいきとした質の生成
全体性の回復(身体+環境+生活習慣)
↓ 実践ガイド
「アジャイル式」健康カイゼンガイド
| 本書の概念 | wiki内の接続先 |
|---|---|
| 全体性の回復 | wholeness |
| 構造保存変容 | christopher-alexander |
| Living System / 動的平衡 | permaculture |
| 「しなければならない」→「ありたい」 | felt-state-pattern / mental-model |
| カイゼンパターン(パタン・ランゲージ) | christopher-alexander |
| 身体フィードバックへの参与 | michael-polanyi / parkour |
| 銀の弾丸はない | agile |
| ポジティヴヘルス(ビュートゾルフ) | wholeness |
ホーキンズ意識レベルとの接続
「しなければならない」→「ありたい」という変容軸は、david-hawkins のフォース→パワーへの移行そのもの:
- フォース的健康管理: 「XXXだけでOK」「一週間でXXX」= 外から課す、苦しみながら
- パワー的健康カイゼン: 「いまここから」「状況に逆らわず」「心地よさを大事に」= 内から溢れる
経緯
- 「アジャイルカラダ開発」(同人誌)— 自身の肉体改造・体質改善の経験を価値/原則としてまとめた
- デブサミ2022「アジャイル式いきいきヘルスマネジメント」セッション
- 翔泳社版「アジャイル式」健康カイゼンガイド(2022年5月、福島梓と共著)
- AsianPLoPで論文発表(健康カイゼンのパタン・ランゲージ論文) (未公開)
- RubyKaigi 2025でサイン会
アジャイル式健康カイゼンの価値と原則
アジャイル宣言を「転用」したフレームワーク。出典:スライド「アジャイル式健康カイゼンに学ぶチームの成長のコツ」(スクフェス大阪2022)および書籍本文。
価値(5つ)
アジャイル宣言と同様、右辺より左辺を重視する:
| 右辺(旧来) | → | 左辺(新しい重点) |
|---|---|---|
| プロセスやツール | → | 自分との対話(身体感覚・感じるものを大切に) |
| 部分的な取り組み | → | 全体的な取り組み(「〜だけでOK」でなく全体へ) |
| 計画やルールに従うこと | → | 状況変化への対応 |
| 短期的成果 | → | 長期的継続(結果は継続に伴って現れる) |
| 専門家への依存 | → | 専門家との協調(「自分専門家」として主体的に) |
価値1「自分との対話」の詳細:
不快は消すものではなく心身が伝えるメッセージである。無視して思考で囚われると、痛いしっぺ返しが来る。→「感じ、味わって、メッセージを読み解く」
原則(11)
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 小さなステップ | ベイビーステップで始め、少しずつ積み上げる |
| なりたい姿(ビジョン) | 未来を描けないとそこにはたどり着けない。ビジョンは進化していい |
| 実験 | すべては実験。続かない・失敗ではなく「合わないとわかった」学び |
| 計測・可視化 | 見えないものを可視化。ただし数値に囚われず感覚との両輪 |
| リズム | 行動:1〜2週間、変化:1ヶ月〜、目標:3〜6ヶ月 |
| 楽しさ | 内発的動機づけ。恐れからではなく、歓びからはじめる |
| コミュニティ・仲間 | 人は関係性の中で成長・進化する |
| 目的の多重性 | 2つ以上の目的を重ねることで価値の高いアクション(一石N鳥) |
| 度合い思考 | 0/1でなく0〜1の度合いで考える。「できる・できない」でなく「これならできる」 |
| 無理なし | 無理なことは続かない。できることから少しずつ |
| 心のゆとり | ゆとりがなければ動けない。やめること=ゆとりを作ること |
values-principles-practices との接続
価値→原則→実践(カイゼンパターン)という3層構造は、XPやパーマカルチャーと同型。Takeshiが繰り返し使う分野横断的なフレームワーク生成パターンの一例。
カイゼンキャンバス
本書の解説のために考案したオリジナルツール。codezine記事でコンパクトにまとめられている(Scrapbox 2022/6/7)。
コ・デザインとの近似
上平崇仁『コ・デザイン』が本書に近いと指摘され購入(2023)。カラダを「外から設計するもの」でなく「共に育てるもの」として捉える視座が共通している。
Scrapboxの命名
- 「赤本」(小井土さんによる命名提案)— 他にも赤い本があるので採用しなかったが界隈では浸透
- 「アジャ健本」— 略称として定着
食の全体性:関連する食事思想
カラダの全体性は、運動だけでなく食事においても同じ論理が働く。本書はこの視点も含む。
丸元淑生:「システム料理学」(食の全体論)
Scrapboxで複数書籍が★★★★で登録されている最重要の食の思想家。
- 「丸元淑生のシステム料理学」(★★★★)— 「食についてこれだけ考えている人がいるのだと驚いた」。食をシステム全体として捉える視点。
- 「短命の食事 長命の食事」 — 食の質・全体性を長期的な健康に接続
- 「スンナリ分かる栄養学ベーシック 深いところで理解する『自然の意に沿った食べ方』」(★★★★)— 副題が象徴的。「自然の意に沿う」= 造化に従う = 全体性
「自然の意に沿った食べ方」というアプローチは matsuo-basho の「造化に従え」と同型の認識論。
ナチュラルハイジーン・フィットフォーライフ・チャイナスタディ
これらはScrapboxに独立ページはないが、「健康本200冊を読み倒し…食事法の最適解」経由で以下の記録がある:
「ちゃんとナチュラルハイジーン(フィットフォーライフ)とか、チャイナスタディにも触れられていた」 「結局の所『正解はない』『自分にあうものを探索するプロセス』が大事ということ。アジャイルカラダ開発で言ってるのと同じ」(Scrapbox)
- ナチュラルハイジーン(Natural Hygiene)/ フィットフォーライフ(Harvie & Marilyn Diamond)— 「朝はフルーツのみ」「食物の組み合わせ」「自然なサイクルへの参与」という全体論的食事法。Takeshiの「朝フルーツ&シリアル以外は食事制限かけてない」(Scrapbox 2020/12/18)という実践記録との一致が見られる。
- チャイナスタディ(T・コリン・キャンベル)— 動物性タンパクと疾患の疫学研究。プラントベース食の科学的根拠。
これらに共通するのは**「部分ではなく全体として食べる」**という視点:
- 栄養素を単体で補給するのではなく食物全体で摂る(ホールフード)
- 体内の消化サイクルを無視せず自然なリズムに従う
- 特定の食物を悪者にする二値論的思考への批判
「医者に頼らなくてもがんは消える」(内海聡)★★★★★
食の全体性を最もラジカルに体現した一冊(Scrapbox★★★★★):
「なぜがんができたのか」という点に着目する。身体や生活習慣をシステムとして捉えたときに、病気はそのシステムが機能不全に陥ったという結果であり、その機能不全が起きた原因に目を向けて修正しないといけない。 痛みを「取り除く」のではなく「感じて情報として受け取る」——走ることで痛みと向き合いフィードバックをもとに修正するという実体験と同型。(Scrapbox)
これは michael-polanyi の from-to 構造・henri-bortoft の「現れを真剣に受け取る」とも直結する。
食の全体性の共通構造
フォース的アプローチ パワー的アプローチ
───────────── ─────────────
栄養素の部分最適 食物全体(ホールフード)
症状の除去・管理 原因(機能不全)への注目
食事制限・禁止リスト 自然なサイクルへの参与
「XXXだけでOK」 「正解はない、探索が大事」
- christopher-alexander — The Nature of Order・構造保存変容が本書の思想的核心
- wholeness — 全体性の回復こそが本書の目的
- felt-state-pattern — 「しなければならない」→「ありたい」の移行:FSPのArmorを脱する実践
- mental-model — 痛みの分離から統合へ:カラダでの体験版
- michael-polanyi — from-to構造:身体フィードバックへの参与
- parkour — Méthode Naturelle:人間本来の機能の回復という同型の問い
- david-hawkins — フォース→パワーへの移行としての健康カイゼン
- permaculture — Living System・動的平衡という共通思想
- agile — アジャイル宣言へのオマージュと超克
- nvc — 「ありたい」= ニーズに繋がること
- matsuo-basho — 「自然の意に沿った食べ方」= 造化に従う:食の全体性と同型
- vegetable-garden — 野菜作り・畑:「育てる」と「食べる」の不可分という実践
- running — ランニング:2012年開始から続く身体実践の核。マイナス15kgの起点
- science-wholeness-tension — 科学・エビデンス主義との緊張:ポジティヴヘルス・健康生成論がその応答
- src-tkskkd-world-scrapbox — Scrapbox記録(21件の関連ページ)
- src-note-kkd — note記事での言及・展開
- src-medium-kkd — Medium記事:ウェルネス・腰痛体験記連作・レガシーボディ改善物語
- src-giantech-blog — giantech.jp 旧ブログ:減量失敗体験連作・スタンディングデスク・ヘルシープログラマ・ヘルスハックカンファレンス
giantech.jp 関連記事(本書の前史・2014〜2017)
減量失敗体験 連作6本(2015-03-09)── 本書「ありたい」の原点
- イントロダクション
- (1) 若気の至りで食事制限!しかし…
- (2) 9品目ダイエットで痩せた!しかし…
- (3) 自転車通勤で健康的に痩せた!!しかし…
- (4) 1日2食で一気に痩せた!しかし…
- 減量失敗体験から学んだこと
実践と実験
- やせる!KPTで気づかされたダイエットの秘訣(2014-08-29)── KPT(アジャイルふりかえり)を健康に応用した初期実験
- スタンディング環境を半年続けてわかったこと(2015-05-26)
- 3年間のランニングと体重の変化をグラフ化してのふりかえり(2015-08-11)── マイナス15kgの記録
- 「ヘルシープログラマ」はプログラマ自身のレガシーコード改善ガイドになるか?(2015-08-26)── 本書のタイトル発想の源泉
- ヘルスハックカンファレンスを松山でやる意味・その理由(2016-02-12)── 本書の前身イベント
- 健康のキーワードは意識的・前向き・全体性、そしてプロセス(2016-04-19)── 「ウェルネスは状態ではなくプロセス」
- 2017年のスタンディングデスク事情を調べてみたらバリエーションが増えていて驚いた件(2017-08-07)
Medium 関連記事(健康・身体・ウェルネス系)
ウェルネス概念の掘り下げ
- 「ウェルネス」を調べてわかった本当の意味(2016-04-18)— WHO定義から遡ってウェルネスの本来の意味を調べた記事。本書の思想的下地
腰痛体験記・魔女の一撃連作(2016年4月)
「寝たきりから脱出」までの自己観察の連作は、痛みを情報として受け取る実践記録:
- ある午後に訪れた魔女の一撃と非日常(2016-04-26)
- はじめてのトイレ、遥かなる旅(2016-04-26)
- 僕はあの日歩いていた爺さんだった(2016-04-27)
- ようやく寝たきりから脱出!?(2016-04-28)
- なぜ立てないほどの腰痛になったのだろうか?(2016-04-29)
「しなやかさ」と40代の身体改善
- 「力強さ」よりも「しなやかさ」を手に入れたいワケ(2017-06-27)— 本書の「動的平衡」「ありたい」に直結
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