価値・原則・実践(Values / Principles / Practices)

「なぜ」「どういう基準で」「何をするか」を3層に分けるフレームワーク。XPのKent Beckが体系化し、パーマカルチャーにも同型の構造が存在する。

問い特徴
価値(Values / 倫理)なぜこれをするのか最も抽象的・変化しにくい。判断の最終根拠
原則(Principles)どういう基準で判断するか価値を文脈に応じて具体化する中間層
実践(Practices)何をするか最も具体的・文脈依存。仮説として扱う

XP における V/P/P

Kent Beck が『エクストリームプログラミング』第2版(2004年、邦訳:角征典訳、オーム社、2015年)で体系化。

5つの価値(Values):コミュニケーション・シンプルさ・フィードバック・勇気・尊重

14の原則(Principles):人間性・経済性・相互利益・自己相似・改善・多様性・振り返り・流れ・機会・冗長性・失敗・品質・ベイビーステップ・責任の受容

実践(Practices):ペアプログラミング・TDD・継続的インテグレーション・オンサイト顧客・週40時間など

「プラクティスは仮説」

3層構造の最も重要な含意は、実践は通過点・仮説に過ぎないという点。

「本書には、プラクティスは通過点にすぎない、プラクティスは自分たちで作り出す、プラクティスは仮説というような記述が繰り返してでてきます。」 — 懸田剛(raw/giantech.jp/_posts/2015/2015-06-25-xpe-2nd-renewal.md

価値と原則が明確であれば、実践は文脈に合わせて自分で作れる。「有名な実践をそのまま適用する」のではなく、「観察して場に合ったデザインをする」——これは次のパーマカルチャーの構造と重なる。


パーマカルチャーにおける同型構造

パーマカルチャーの原則も同じ3層構造を持つ(Bill Mollison)。

XPパーマカルチャー
価値5価値(コミュニケーション等)3倫理(地球・人・余剰の還元)
原則14原則Holmgren の12原則 / Mollison の11原則
実践プラクティス群積層マルチ・チキントラクター・スパイラルガーデン等

「パーマカルチャーも倫理・原理・実践の構成になっており……その場を観察し、その場に適したデザイン(=プラクティス)を創意工夫の元実現していくことが重要なのです。」 — 懸田剛(raw/giantech.jp/_posts/2015/2015-06-25-xpe-2nd-renewal.md

XP とパーマカルチャーが同型であることは、Kent Beck 自身が XP 白本の参考文献にパーマカルチャーを挙げていたことでも裏付けられる(→ permaculture)。


懸田の洞察:TDD との同型

2015年の XPE 新訳刊行記念ブログ記事で、懸田はこの3層構造がさらに TDD の構造と同型であるという仮説を提示した。

「価値、原則、プラクティスという構造は、これ自体がTDDと同じ構造になっているのではないかと仮説です。 価値、つまり『自分やチームが大事にすること』というのは、その人やチームが常に満足するべき条件であり、原則は満足条件が達成できているかを確認するためのテストであり、プラクティスつまり実際の現実世界の行動はプロダクトコードである。」 — 懸田剛(raw/giantech.jp/_posts/2015/2015-06-25-xpe-2nd-renewal.md

V/P/PTDD
価値満足条件(テストの目的)
原則テスト(満足条件を確認する)
実践プロダクトコード(実際の行動)

価値と行動がずれているとき = 満足条件を満たしていないテストが存在する状態。いくら実践を積み重ねても、価値が不明確なままでは満足には至らない。


価値駆動人生(Value Driven Life)

この洞察から懸田は価値駆動人生(Value Driven Life:懸田の造語)という概念を展開した。

「価値と現実を一致させるということは、自分自身の満足条件を明確にして、そこを満足させるテストを書き、そのテストをパスするプロダクトコードを書き、常にフィードバックサイクルを回しながら、満足条件が満たされるように振る舞いし続けることと同義ではないでしょうか。」 — 懸田剛(raw/giantech.jp/_posts/2015/2015-06-25-xpe-2nd-renewal.md

Kent Beck 自身は本書の結論でこう述べている:

「今すぐに始めよう。自分の価値について考えてみよう。その価値と調和した生き方を意識的に選択しよう。」 — Kent Beck, 『エクストリームプログラミング』(角征典 訳)

「価値と現実の一致」はKent Beck 自身の XP第2版執筆(第1版からの5年)そのものの軌跡でもあった、と懸田は読んでいる。


分野を超えた同型

この3層構造は、懸田が一貫して探索してきた分野を超えた同型原理の代表的なパターン。

分野価値層原則層実践層
XP5価値14原則プラクティス群
パーマカルチャー3倫理11/12原則有名な実践
パタン・ランゲージ生命の質パターン群実装・配置
NVCニーズ観察/感情/ニーズの区別OFNR 4ステップ

関連ページ

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