パーマカルチャーの原則

パーマカルチャーのデザイン体系は、3つの倫理デザイン原則群で構成される。倫理が「なぜデザインするか」の土台。デザイン原則はモリソン(11原則)とホルムグレン(12原則)がそれぞれ体系化しており、重なりながらも視点が異なる。


3つの倫理(Mollison)

ビル・モリソンが提唱したパーマカルチャーの根幹となる倫理。すべてのデザイン判断の拠り所。

  1. 地球を世話する(Care for the Earth) — 生命を支える土・水・空気・生態系を守り育てる
  2. 人を世話する(Care for People) — 人が生きるのに必要なものへのアクセスを確保する
  3. 余剰を分かち合う(Fair Share / Return of Surplus) — 余剰は地球と人へ還元し、蓄積・支配の連鎖を断つ

出典:Bill Mollison 著作群(Introduction to Permaculture 他)


11のデザイン原則(Mollison)

ビル・モリソンが『Introduction to Permaculture』(1991年)でまとめた11原則。「配置・機能・関係」の観点が中心で、より実践的・設計的。

#原則(英)日本語核心
1Relative Location相対的な配置要素同士の関係で配置を決める。一方の出力が他方の入力になるよう設計する
2Each Element Performs Many Functions各要素は多機能に要素はできるだけ多くの機能を担うよう選び・置く
3Each Important Function is Supported by Many Elements重要な機能は複数の要素で支える水・食料・防火などは複数の手段で確保。冗長性が安定をもたらす
4Energy Efficient Planningエネルギー効率のよい計画ゾーン・セクター・傾斜を活用し、労働とエネルギーを最小化する
5Using Biological Resources生物資源を活用する化石資源より再生可能な生物の力(窒素固定・害虫駆除・土壌形成)を使う
6Energy Cyclingエネルギーの循環エネルギーを直線的に消費せず循環させる。廃棄物を次の資源に
7Small Scale Intensive Systems小規模・集約的なシステム広げる前に手近なところを徹底的に設計・発展させる
8Accelerating Succession and Evolution遷移と進化を加速する複雑性と多様性に向けて植物・動物・土壌生物を誘導する
9Diversity多様性ポリカルチャー(多品種混植)とギルド(相互支援する種の集合)を活用する
10Edge Effectエッジ効果2つの生態系が接する境界帯(エッジ)に多様性と生産性が集中する
11Attitudinal Principles姿勢の原則すべては双方向に働く。問題は解決策である。収穫の限界はない

出典:Bill Mollison 著『Introduction to Permaculture』(1991年)/ 解説:TreeYo Permaculture


12のデザイン原則(Holmgren)

デビッド・ホルムグレンが『Permaculture: Principles and Pathways Beyond Sustainability』(2002年)で体系化。各原則にアイコンと格言が対応している。

#原則(英)日本語核心
1Observe and Interact観察し相互作用するまず観る。介入は観察の後
2Catch and Store Energyエネルギーを受け取り蓄える豊かな時期にリソースを蓄積する
3Obtain a Yield収穫を得るシステムから実際の成果を引き出す
4Apply Self-Regulation and Accept Feedback自己調整しフィードバックを受け入れるフィードバックループを機能させる
5Use and Value Renewable Resources再生可能な資源を使い大切にする消耗より再生を選ぶ
6Produce No Waste廃棄物を出さないある要素の出力が次の要素の入力になる
7Design from Patterns to Detailsパターンから詳細へデザインする全体のパターンを先に、詳細は後
8Integrate Rather than Segregate統合し、分離しない要素を組み合わせ多機能化・相互支援
9Use Small and Slow Solutions小さくゆっくりとしたソリューションを使うスケールが小さいほど観察・修正しやすい
10Use and Value Diversity多様性を使い大切にする多様性がシステムに安定と回復力をもたらす
11Use Edges and Value the Marginalエッジを使い大切にする境界・周縁に豊かさと創造性が宿る
12Creatively Use and Respond to Change変化に創造的に使い応答する変化を避けるのでなく活かす

出典:David Holmgren 著『Permaculture: Principles and Pathways Beyond Sustainability』(2002年)


エッジ効果(原則11)とソフトウェア開発

エッジ効果は、懸田がパーマカルチャーとXPの接続を語る際に最初に挙げる原則。

「『エッジ効果』というパーマカルチャー原則がありますが、これはソフトウェア開発者と顧客を同じ場所で仕事をするようにすることで、開発者と顧客の間の相互作用を最大にするというエッジ効果を応用した取り組みということです。」 — 懸田剛(パーマカルチャー関西メルマガ 2014年2+3月号寄稿 / raw/giantech.jp/pages/pc/column_vol1.md

エッジとは2つの異なる生態系が接する境界帯のこと。森と草原の際、水辺と陸地の際は、それぞれ単独の生態系より多様な種が集まり、生産性が高い。XPの「オンサイト顧客」プラクティスはこの原則の直接の応用である。


各原則のTakeshiによる実践

原則1「観察」

積層マルチの実践(2014年)で、土の外の世界(ナメクジ・コガネムシ)を観察できていなかったことへの気づきを記録している。

「この出来事で学んだことは、例え積層マルチのような有名な実践でも、結果として何をもたらすのかを良い面も悪い面も含めて想像しておくとよいということです。また、その場をよく観察し適切な働きかけをしていくことの重要性に気づかされました。」 — 懸田剛(パーマカルチャー関西メルマガ 2014年4月号寄稿 / raw/giantech.jp/pages/pc/column_vol2.md

原則8「統合」・原則10「多様性」

クローバー導入による土壌改良・マルチ・益虫誘致の複合効果。単一目的ではなく複数機能を重ねるデザイン。

原則9「小さくゆっくり」

人が自然の力を少し借りることで恵を分けて頂くという謙虚な姿勢が必要なのでしょうね。」 — 懸田剛(raw/giantech.jp/pages/pc/column_vol1.md


他分野との同型

パーマカルチャーの原則は、Takeshiが発見した「3つの円」(XP・パタン・ランゲージ・パーマカルチャー)の同型性の文脈で読むと理解が深まる。

パーマカルチャー原則対応するXP/パタン・ランゲージの概念
Mollison原則1「相対的な配置」/ Holmgren原則8「統合」アレグザンダーの「センター」が互いを強化する構造
Mollison原則10「エッジ効果」/ Holmgren原則11XP「オンサイト顧客」・チームの境界設計
Holmgren原則7「パターンから詳細へ」パタン・ランゲージのデザイン順序
Mollison原則1「観察から始める」/ Holmgren原則1nature-observation ゲーテ現象学の参与的認識
Holmgren原則12「変化に応答」アジャイル「変化を歓迎する」

関連ページ

  • permaculture — パーマカルチャー概要・歴史・Takeshiとの関わり
  • cross-field-principles — 分野を超えた同型原理:XP×パターン×パーマカルチャーの3円
  • nature-observation — 自然観察:原則1「観察」の実践
  • christopher-alexander — パターン・ランゲージ:原則7・8との接続
  • wholeness — 全体性:パーマカルチャーの哲学的基盤
  • xp — eXtreme Programming:Kent Beck「Perma Programming」の源泉
  • biotope-ecosystem-wholeness — ビオトープ:「人のための生産」を超える共生の視座
  • src-giantech-blog — 一次資料:懸田の実践記録(column_vol1・vol2)