ティール組織(Teal Organization)
フレデリック・ラルー(Frédéric Laloux)が提唱した組織進化の理論。「管理型から進化型へ、個人のありのままを活かせる組織づくり」を核心とする。
思想的背景
インテグラル理論(ケン・ウィルバー)の発達段階論がベース。組織の色分け(レッド→アンバー→オレンジ→グリーン→ティール)はチャクラの色に由来する。
成人発達理論(ロバート・キーガン)の発達段階とも相似構造を持つ。成人発達理論の「含んで超える」という進化の原則——前の段階を否定せず取り込みながら次の段階へ——は、shu-ha-ri(守破離)の構造とも対応する。
3つの特徴(ラルーの定義)
- セルフマネジメント(Self-Management)— 階層なしに自律的に機能する
- 全体性(Wholeness)— 仮面をかぶらず全人格で組織に参加する
- 進化する目的(Evolutionary Purpose)— 組織が生命体として自らの目的を持つ
日本的展開
「自然経営(JINEN Management)」(武井浩三・天外伺朗)がティール組織の次を目指す。JTS4コンセプトマップ上では「超えた?」という疑問符付きで示される。
関連実践:ホラクラシー・ソシオクラシー・DXO(手放す経営ラボラトリー)
スクラムとの接続
スクラムガイド2020の “Self-management” という表記変更にはティール組織の影響が大きいと推測される。ティール組織→ホラクラシー→アジャイル・スクラムという思想的浸透の流れ。
アジャイルとの関係
「WFとアジャイルの対立を超えて『人がイキイキと仕事をして成果を挙げられるやり方』へ向かうと捉えるのがいいかもね、と思ったけど、そういうのはティール組織でもう言ってたね。」
スモールイズビューティフルとの接続
「ティール組織が知られてきた今こそ、スモールイズビューティフルを学ぶ機会なのではなかろうか?」
E.F.シューマッハーの「小さいことは美しい」——規模の縮小・分散・人間的な単位——とティール組織のセルフマネジメントは根底でつながる。→ schumacher-small-is-beautiful
ビュートゾルフ(Buurtzorg)
ティール組織の最も有名な事例。オランダの訪問看護組織。ポジティヴヘルスを実践し「人のエネルギーを生の方向へ向かわせる」ヘルスケアを体現。→ wholeness-health
内的変容との不可分性——ザ・メンタルモデルとの接続(★★★)
ティール組織の3つの特徴のうち「全体性(Wholeness)」は、外側の構造変革だけでは実現できない。鍵は個人の内的変容にある。
「システムの分断、組織の分断をどう防いで分化していくかも大事なんだけど、最も大事なのは個人の内面の分離・分断で、多分これが一番どうにもなっていない。個人の分離から統合へのアプローチが『ザ・メンタルモデル』で行われていること。全体性の回復は個人から始まる。」
「世間は『組織の構造』から組織の変化を見ているのだけど、僕は『個人の(振る舞いの)構造』から組織の変化を見ていけるのではないかという仮説を持っている。それがザ・メンタルモデルであり、個人の構造は、組織の構造と不可分ではないかという仮説。まぁこれは学習する組織まんまという気もする。」
「メンタルモデルを社内のリテラシーとしている会社の話を聞いた。メンタルモデルを知り互いに共感しながら仕事をする。外側ではなく内側を観て場を変える。自分の仮説通りの組織があることに感動した。やってるところはやってるのだなぁ。」
この観点では、ティール組織への移行は経営者・リーダーの内的変容なしには不可能となる。組織の文化・場は、そこにいる人——特にリーダー——の内的状態を映し出す鏡だからだ。
ティール組織の「全体性(Wholeness)」
↕
個人の内面:分離 → 統合
(痛みの回避行動 → 本来の自己)
↕
ザ・メンタルモデル(由佐美加子)
felt-state-pattern はこの連鎖を組織レベルで記述する:個人のArmor(防衛)が場全体のArmorを形成し、ティール組織が目指す「生き生きとした場」を阻害する。
構造変革の限界
重要な問い:「構造の変化だけで本当に実現できる?」
ティール組織が目指す「生き生きとした組織」は、構造だけでは実現できない。felt-state-pattern が示すように、構造が変わっても場のPressure→Fear→Armorのパターンが残れば機能しない。**構造変革(外側)+内的変容(内側)**が車の両輪。
関連ページ
- organization-development — 組織開発:ティール組織を含む組織変革の全体像
- mental-model — ザ・メンタルモデル:個人の内的変容の実践。ティール組織との連結は不可欠
- felt-state-pattern — FSP:構造変革だけでは届かない「場の力学」
- u-theory — U理論:セルフマネジメントを支える意識の変容
- shu-ha-ri — 守破離:「含んで超える」との構造的対応
- wholeness-health — 健康の全体論:ビュートゾルフの実践
- christopher-alexander — 全体性:ティールが目指す「生き生きとした組織」とアレグザンダーの「生命の強度」
- nonaka-ikujiro — 知識創造:組織の知識生成とティールの自律性
- src-medium-kkd — Medium「ティール組織とアジャイル」
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- ティール組織とアジャイル(2018-12-24)