人間理解
「人が大事、人が中心」はすでに前提条件になった。その先にあるのは、人間の内側を理解するパラダイムへの転換——人間理解(Human Understanding)である。
スクフェス仙台2022のスライド(スクラムマスターの自己理解から始めるチームの生命構造 P43、2022)で初めて「人間中心から、人間理解のパラダイムへ」として提示。XP祭り2023では「人間中心から人間理解のパラダイムへ」をプロポーザル主題とした。
人間中心 → 人間理解
| 人間中心(Human-Centered) | 人間理解(Human Understanding) |
|---|---|
| 人を価値の中心に置く | 人の内側が何を動かしているかを見る |
| ユーザー・チームメンバーを尊重する | 自分自身の内的世界を理解することが出発点 |
| 関係性・プロセスのデザイン | 自己理解をベースにした存在としての関わり |
| 「どう扱うか」の問い | 「何が起きているか」の問い |
人間中心設計・アジャイルの「人が大事」は重要だが、どうしても関係性のデザイン・集団としてのデザインに終始してしまう。人間理解はその先を問う:ひとりひとりが自分の内的世界を理解し、自分に繋がる生き方ができるとき、チームや組織は内側から自然に開いていく(Unfolding)。
内的世界の理解から始まる組織論
自分にとって、組織・会社がいきいきとするとか、世界に価値を提供するというのは本質ではなく、あくまでも、ひとりひとりが自分のいのちに従って生きる世界というのが究極的な目指す場所です。 — note「スクフェス仙台2022で自己理解のワークをしてきた話」
この立場では、組織の生命性はトップダウンで設計されるものではなく、まずリーダーが、次第にひとりひとりが自己理解を深めることで、内側から生まれてくるものとして捉える。
自己理解(自己共感を通じて)→ 自分につながる生き方 → チームが内側から開いていく(Unfolding)
そうせざるを得ない
人間理解の核心にある洞察:どんな人間の行動にも、その人の内的世界から見れば「そうせざるを得ない」合理的な理由がある。
「その人のそうせざるを得ない理由を想像してみる。どんなに理解できそうにない行動でもその人の立場になると「そりゃあそうするよね」という合理的な理由がある。そこに目を向けられるか?」 — tkskkd.com Scrapbox「その人のそうせざるを得ない理由を想像してみる」
「内的世界の構造を他者が知ることによって、他者の理解も進む。「ああ、そういう仕組みならば、その行動せざるを得ないよね」という理解というか受容。」 — tkskkd.com Scrapbox「当事者研究を『ザ・メンタルモデル』の紐解きを使って行うと」
「できないことを叱責したり批判するのでなく相手が「そうせざるを得ない」状況を想像し、自分をなくして共感することができるかどうかが鍵。「誰から何かをできない」ことに自分が反応しているうちは共感はできない。」 — tkskkd.com Scrapbox
ただし、他者の「そうせざるを得ない」を想像できるようになるには、まず自分自身の「そうせざるを得ない」構造に気づくことが前提になる。自分の無意識の回避パターン(生存適合OS)が見えていないとき、他者のパターンに対して反応するだけになる——批判・叱責・解釈・説得のどれも、相手の内的世界に届かない。
自己理解が進むにつれて、「なぜあの人はああするのか理解できない」が「ああ、そうせざるを得ない仕組みがあるんだな」に変わる。これが 自己分離 の解消と他者理解が同時に起きるメカニズムである。
「感じ」を認識の起点とする
人間理解は観察・分析ではなく、感じることを認識の入口とする点で既存の人間中心アプローチと異なる。
- 感じの実存 — 感じを存在と認識の起点として扱う立場
- nvc — 感情をニーズへのメッセージとして受け取る
- ザ・メンタルモデル — 無意識の信念(生存適合OS)を感じることで意識化する
- observer-in-wholeness — 自分を含めた全体性の観測者として場に関わる
XP祭りでの展開
- XP祭り2022基調講演(→ 全体性)— XPの内省と全体性への到達
- XP祭り2023プロポーザル — 「人間中心から人間理解のパラダイムへ」を主題として提示(→ felt-state-pattern)
関連ページ
- empathy — 共感:人間理解の認識機構。自己共感→自己理解、他者共感→他者理解
- self-understanding — 自己理解:自己共感を通じて深まる
- self-separation — 自己分離:自己理解が遮断される状態
- felt-existence — 感じの実存:人間理解の認識論的基盤
- observer-in-wholeness — 観測者として全体を観る
- wholeness — 全体性:人間中心から全体性へ
- felt-state-pattern — FSP:XP祭り2023での現在地
- nvc — 感情を認識の道具として使う
- mental-model — 人間の内側の構造地図
- human-attunement-system — あり方(Being):人間理解の実践形